Case 4
個人的考察
case-D なすすべもなく決裂
Dさんとは一度、それもずいぶん最初の頃にお会いしました。広告の写真を見て「この人と縁があった」とピンと来たと言っていました。Dさんは海外に住んでいて、たまたま帰国している時に偶然みつけたことになります。これは、すごいタイミング!と思いました。
初期の頃なのでカウンセリングは上手く行きませんでした。何を言いたいのか、何に焦点を当てていいのか全然わからないまま時間だけが過ぎていったのです。つかみどころがない話が延々と続くことになり、キーワードも決めることができませんでした。
「今、一番見る必要がある場面」に決めて、やっとセラピーにこぎつけることができたのです。その他のキーワードは一切入れていません。絞り込む度に別の話に移り全然納得してもらえなかったのです。
すごく変わったセッションになりました。誘導するとわたしが出てきたそうです。商家のお嬢さんで、いい着物を着てツンとすましている。Dさんは町娘でした。そして好きな男性がわたしのことを愛しているらしいと言っていました。
急に「あんたはどうなの、なんとも思わないの?」と聞かれ、ちょっとびっくりしたわたしは「わたしが何か思うということはないです。ご自分の体験を続けて下さい。」と言ったのですが、橋から彼は身を投げて死んだらしく、わたしを責め始めたのでセッションを一時中断し話を聞くことにしました。
すると催眠状態であったことも完全否定し怒り出すのです。冷静に説明したのですが聞いてくれず、「やっぱりあんたは昔から冷たい女なんだよっ」と言い捨てて帰ってしまわれました。
もしかしたら本当にそういう縁だったのかもわかりませんが、かといってこちらに記憶がないのに合わせる訳にもいかないし、そもそも誘導しながら過去生の人物の役をやるのも無理な話です。支離滅裂な展開になりましたが、もちろん単に、うっぷん晴らしに来た訳でもないと思います。
その当時は正直凹みました。自分でも意味が全然わからなかったのです。何で?と思うばかりでした。そして、きちんとセラピストの役目を果たせなかったことで自分を責め、しばらくはクライアントの顔色をうかがうような状態が続きました。
でも、その後は二度と起こることもなく、やがて自信を取り戻していきます。あれはきっと特異なケースなのだと思うことで記憶を封印したのです。そのうち、いつか、わかるだろうと信じてね。
そして、5年以上の月日が流れた今、改めて考えてみると多くの学びがあります。
やはりカウンセリングの経験が足りなかったことが一番だと思います。Dさんの知りたかったことが何なのか、全然引き出すことができていないのです。望みながら、でも実は体験を恐れている人の場合は、よくこのパターンがあります。
焦点を絞ろうとするとスルりと抜けて別の方向に持って行こうとします。それは、まだ向き合う準備ができていなかったり迷っている合図なのです。本当は、このとき指摘して確認したり促してあげる必要がありました。そうすれば正しいプロセスで体験できたはずです。
また、誘導中にわたしに質問を投げかけてきた場面でも、直接反応せず、そのイメージの過去生のわたしがなんと言っているのかを聞いてもらう様にすればよかったのです。あの時はびっくりして咄嗟に反応してしまいましたが、考えてみれば、そうすることもできたのではないかと思います。
・・・と言っても起きたことに無駄がないのも事実です。あの時は、あの流れになることがお互いにとって必要だったのです。きっと彼女も落ち着いた後で色々なことに気づけたと思います。今、わたしが色々気づけているみたいにね。
もし、どこかで、このHPを読んでいるようであれば感謝の気持ちを伝えたいと思います。